『東京の色100』046~050

046 雷おこし

ご当地○○が話題になって久しいが、この雷おこしは食べ物による地域活性化の先駆者と言えるだろう。200年以上も前から、浅草の銘菓としてまちの賑わいに貢献している。

雷おこしが浅草を代表するお菓子で、お米から作られていることをご存知の方は多いと思うが、「雷」が雷門に由来していて、「おこし」は名をおこす、家をおこすとかけていることを知る人は案外少ないのではないか。

雷おこしの由来となった雷門は、正式には風雷神門という。

雷神ばかりが人気になり「風神が居候する雷門」とまで言われるようになったが、雷おこしでは風神も影でちゃんと活躍


している。雷おこしの原料となるお米は、強風や台風が来れば収穫できなくなってしまう。風神は風を司る神であるから、美味しいお米は風神に守られて作られたと言ってもいいだろう。

風神に守られて育ったお米が、雷神の人気にあやかって、浅草を盛り上げている。

そんなことを考えると、やさしいお米色の雷おこしがほんのり温かく感じられた。

 

カラープランニングセンター 池田麻美

マンセル値:2.5Y 84

NOCS2.5Y3.63



047 深川鼠(ふかがわねずみ)

深川といえば江戸を代表する下町ですが、深川鼠といえば、ハイカラな新橋芸者が好んだ新橋色と並び称される、粋な辰巳芸者が好んだとされる江戸の色を指します。

この深川鼠は、緑みがかった明るめのGRAYで、江戸時代に、深川木場のいなせな男衆や、芸は売っても色は売らないという心意気をもつ粋な辰巳芸者に着られたことから、深川鼠という色名がつきました。ここでのは、火事の多い江戸では色が嫌われたためだとか。

江戸時代、厳しい奢侈禁止令が出されて、江戸の町人たちは茶、 鼠、藍しか着用してはならないとされました。それで

深川鼠に塗られた東富橋


も、江戸の町民たちは、許された地味な色域の中で、粋で豊かな服装文化を展開したのです。

深川鼠は、世界でも珍しい、地味な色文化を享受した江戸町民の粋の証なのでしょう。

 

一般財団法人日本ファッション協会 山内 誠

出典『色の名前507

  福田邦夫著、主婦の友社

マンセル値:7.5G 62

NOCS7.5G2.56.4



048 人力車

日本人にはもとより、年々増えている外国人にも観光地として人気の高い浅草。浅草駅から雷門へ向かうと、「人力車」を目にする事ができます。大きな車輪に高い位置にある座面、黒×赤のコントラストのある配色が、道行く人の視線を集めます。浅草の街の中で、建築物や工作物などの動かないものを「静」とすると、人や植物、飾り物などと共に「動」の役割を果たす人力車は、街に程よいにぎわいを与えています。人力車は、乗客とそれを見守る観客に体験を提供し、浅草の名物の一つとなっています。

 

カラーコーディネーター 大倉素子


マンセル値:2.5R 410

                N1.5

NOCS2.5R6.46.4

     N1.5



049 浅草西参道裏

浅草寺に程近い浅草西参道商店街は、木道の商店街として生まれ変わり、多くの人に親しまれています。落ち着きと日本らしさを携えた木の素材と朱赤系の色合いが、暖かさとにぎわいを感じさせ、商店街で過ごす時間に「非日常」感を醸し出しています。この浅草西参道商店街の浅草寺側の入り口は、華やかな歌舞伎座風のデザインにリニューアルされ、「お祭り」をテーマにした商店が並んでいます。浅草寺から「お祭り商店街西参道」へ向かっていくと、商店の表側のみならず、遠くから目に入る裏側の造作にも配慮がなされていることが分かります。ガスメーターや室外機などは目立ちにくいように覆われ、壁は表側ともトータルでコーディネートされた朱赤色とダークブラウン系に塗装されています。

 

カラーコーディネーター 大倉素子

 

 

 

西参道商店街


マンセル値:7.5R 410

NOCS7.5R6.47.4



050 江戸紫

 

過去、洋の東西を問わず「紫」は高貴な色の代表でした。貝紫や紫草など、紫色の染料は世界的に希少なため、1856年に合成染料のMAUVEが生み出されるまで、「紫」は貴重な色として丁寧に扱われていました。聖徳太子が定めたとされる冠位十二階。その最高位が紫(濃紫)であったことは広く知られています。

「江戸紫」は、江戸時代に、武蔵野に自生していた紫草を使って染められたことから命名されました。歌舞伎十八番を代表する『助六』の鉢巻きがこの「江戸紫」で、この青味を


帯びた色調が、江戸っ子の粋を表す色の一つとしてあげられます。

この「江戸紫」と並び称されるのが「京紫」です。こちらは昔からの正統的な紫染めとされている赤みを帯びた色調が特徴の染めで、優雅さを表す色と評されます。別名「古代紫」。それに対して「江戸紫」を「今紫」と呼ぶこともあるようで、この「今紫」は、トラディショナルな「紫」に対して、流行色としての「紫」の新鮮な息吹が感じられる名前といえるものです。

 

一般財団法人日本ファッション協会 山内 誠

江戸紫

(出典『色の名前507』)

マンセル値:3P 3.57

NOCS3P5.48.2

京紫

(出典『色の名前507』)

マンセル値:6P 33

NOCS6P2.512.2