『東京の色100』036~040

036 東京大学赤門

赤門は東京大学本郷キャンパスの南西部にあり、本郷通りに面している朱塗りの門である。もともとは旧加賀藩主前田家上屋敷の御守殿門であり、東京大学ができる50年以上も前の江戸時代から存在した。1827年(文政10年)に第12代加賀藩主前田斉泰が第11代将軍徳川家斉の第21女、溶姫を迎える際に建造された。当時、三位以上の大名が将軍家から夫人を迎える場合、表通りから夫人の居所へ出入りする門を朱塗りにするのが習わしであった。夫人や夫人の居所を御守殿と称し、また朱塗りにした門を御守殿門と呼んだ。表門の黒門に対して赤門とも呼ばれた。当時の赤門で現存するものはこの東京大学の赤門のみである。ちなみに、黒門は東京国立博物館の敷地に移設されている旧鳥取藩池田家江戸上屋敷表門が有名である(通称・上野の黒門)。

明治維新により、加賀藩前田家の敷地の大半が新政府に返上され、1877年に現在の東京大学本郷キャンパスに移管された。それ以来、東京大学の1つのシンボルとして親しまれている。

 

 

 

上野の黒門

 


建築様式としては薬医門であり、切妻造となっている。左右に唐破風造の番所を置いている。屋根上部の棟瓦には葵の紋、軒の丸瓦には前田家の家紋梅鉢を配する。加賀藩上屋敷時代には赤門周辺に砂か砂利が敷き詰められており、2002年の周辺整備でも門の表側には白い砂利が敷き詰められた。

国指定重要文化財。

 

合同会社ヘアカラーマスター検定協会 代表 中川登紀子

マンセル値:7.5R 47

NOCS7.5R4.88.8



037 一味唐辛子(薬研堀)

一味唐辛子は、赤唐辛子を原材料とする赤くて辛味のある調味料である。唐辛子はその強烈な辛味に特徴があるが、これは唐辛子に含まれるカプサイシンと言う辛味成分に由来がある。自生植物である唐辛子は、野生動物に種子が食べられないように自衛手段として辛味成分を獲得した。また、鮮やかな赤はカプサンチンという赤い色素に由来するが、これは一種の警告色であり、捕食者に自身の強烈な辛味をアピールするための色である。事実、人間以外の哺乳類は辛味を嫌うのである。


唐辛子の伝来は15世紀、コロンブスの新大陸発見に端を発する。インドから胡椒(ペッパー)を持ち帰るはずのコロンブスが、中米で発見・持ち帰ったのがこの唐辛子(レッドペッパー)だったのである。ヨーロッパに渡った唐辛子が地球を半周して日本にもたらされるのはその約50年後である。伝来当初はあまりの辛さに食品として受け入れられなかったそうだが、江戸時代初期、薬研掘(現在の中央区東日本橋)に中島徳右衛門と言う男が現れる。彼が考案したのが、当時漢方薬として使われていた赤唐辛子に芥子、陳皮、胡麻、山椒、麻の実、紫蘇、海苔、青海苔などを混ぜて作られた七味唐辛子。別名「薬研掘」。また、赤唐辛子のみを乾燥してすり潰して粉末にしたのが一味。別名「大辛」(おおから)。ここにようやく日本食に合う、本格的な辛味調味料がお目見えしたのである。

 

株式会社中川ケミカル 藤崎 豊

マンセル値:10R 3.7/10.9

NOCS10R 7.17.8



038 万世橋の高架煉瓦の色

秋葉原から総武線で新宿に向うと、間もなく左手に趣のある煉瓦高架が見える。この煉瓦の建造物は旧万世橋駅で神田川沿いに万世橋から昌平橋辺りまでずっと続いている。近づいてみるとイギリス積みの煉瓦壁と味わいのある装飾を見ることができる。万世橋の北側は秋葉原電気街の原色の広告類で埋まってしまったが、神田川の南側にあるこの建造物は、近くまで迫った喧騒を忘れさせてくれる落ち着きと風格を持っている。煉瓦の色彩を測ってみると、色味を表す色相が1.5YR、明度が4、そして鮮やかさを表す彩度が4という色値が得られた。


1.5YR 4/4という煉瓦色は伝統的な木造の日本の家屋では見られなかった色であり、強い色味があり、何処か異国情緒を感じさせる。日本の土壁は10YR辺りの色相を中心としていて、1.5YRという赤さはない。さらに4という彩度が強い色味を感じさせる。近年、マンション等の外壁に煉瓦タイルが使用されることも増え、赤みの強い色調には慣れてしまったが、木造の低彩度色しか知らなかった時代には煉瓦色は驚きを持って迎え入れられたであろう。

万世橋から昌平橋までは煉瓦アーチがそのまま保存されているが、昌平橋を過ぎた辺りでは煉瓦高架下の空間はレストランとして利用され、親しまれている。

 

色彩計画家/クリマ代表 吉田愼悟

マンセル値:1.5YR 44

NOCS1.5YR3.210.6



039 浅草舟和の芋ようかん

東京、浅草の味といえば舟和の芋ようかんが思い浮かぶ。この芋ようかんを測色するとマンセル値で5Y 6.56。純色の黄色の彩度を落とした穏やかな色である。

この温かみのある色を見ると、家族や大切なひとへの土産につい買いたくなるから不思議だ。

明治35年創業の舟和は、関東大震災や戦災を乗り越え、今も変わらず浅草にある。創業当時からの芋ようかんは、着色料や保存料を使わず、さつまいもの自然な色と素朴な味ででき


ている。芋ようかんソフトクリームやバター風味の焼き芋ようかんといった新しいアレンジになっても、やはり浅草の味であり、浅草の色である。

 

立教大学観光学科 齋藤千映

マンセル値:5Y 6.56

NOCS5Y5.26.2



040 浅草九重あげまんじゅうの鳥の子色

平日でもお祭りのように賑わっている浅草の仲見世通りを歩いていると、浅草九重のあげまんじゅうが目に入った。

おまんじゅうに天ぷら粉をつけてカラッと揚げることでできあがるあげまんじゅうはほんのりと黄色い衣に包まれた、なんとも素敵なお菓子である。

昭和37年創業の老舗、浅草九重は平日にも関わらず行列を作っている。


私は最もポピュラーなこしあんを食べたが、他にもつぶあん、抹茶あん、かぼちゃあん、さくらあん、カスタードあんがあり、店頭に色とりどりに並んでいる様子も店の持つ魅力の一つである。

この、ほのかに黄色く淡い玉子色は、優しさと穏やかさを感じさせてくれる色調だが、口に入れると、熱々でさくっとした軽快な歯触りと共に良質なあんこの味わいが広がる。

今後もこのあげまんじゅうの色を浅草の町と一緒に引き継いでいってもらいたいものだ。

浅草を訪れた際は、おひとついかがだろう。

*鳥の子色とは日本の伝統色名で卵の殻の色のこと

 

首都大学東京システムデザイン学部 中山玲美

マンセル値:7.5Y 8.5/3.5

NOCS7.5Y3.61.6