『東京の100』001~005

001 東京駅の赤煉瓦色

近頃建設される鉄道駅舎は、経済性と機能性が優先されるためか、何処も同じような意匠で印象に残らない。しかし、丸の内の玄関口となっている赤煉瓦の東京駅は、歴史を感じさせる風格があり、地域のランドマークとして愛されている。この赤煉瓦造りの東京駅は辰野金吾の設計で1914年に竣工した。第2次世界大戦で、東京駅はその多くが破壊されたが、1947年には修復され、2003年には国の重要文化財に指定されている。


これまで赤煉瓦の東京駅は、近代的な駅舎への建替のため取り壊しも検討されたが、「赤煉瓦の東京駅を愛する市民の会」などによる保存運動が活発化し、2012年には、創建当時の形に復元された。この東京駅は丸の内に建てられているグレイッシュな高層建築物群とは対比的に、壁面の赤煉瓦色と屋根に葺かれた黒いスレートが、東京人の心に残る印象的な風景をつくり出している。

 

カラーコーポレーション クリマ代表・色彩計画家 吉田愼悟

マンセル値:10R 35

NOCS10R413



002 浅草寺雷門の弁柄色

雷門(かみなりもん)の正式名称は風雷神門(ふうらいじんもん)。重さ700kgの巨大な「提灯」を中央に、右側に風神、左側に雷神が鎮座する。建立は942年であるが、幾度か炎上消失があった。現在の門が建てられたのは 昭和35年(196051日。松下電器産業(株)の創始者、松下幸之助氏により寄進された。現在の雷門は浅草寺の正面入り口に位置し、観光客に人気のスポットである雷門は日本を象徴する風景として外国人向けに日本を紹介するパンフレット、お土産のレリーフなどに採用されることが多い。雷門をくぐ

ると仲見世が続くが、仲見世をはじめ周辺の街路灯やアー


ケード等も弁柄色に塗られているので町全体に一体感がある。雷門の色は朱色と表現される事も多いが実際には弁柄色と言ってよく、歴史を感じさせる色である。JISで言う、朱色(6R 5.5/14)と比べると明度・彩度ともに明らかに低い。

 

株式会社中川ケミカル 中川 隆之

マンセル値:7.5R 4.6/5.7

NOCS7.5R49



003 中央線快速の朱色

日本の各鉄道事業者が定めている色は、誤乗防止のための各路線の車体色、駅の駅名標、地図式になっている運賃表、サインシステム等の案内表示に使用されている。JRグループ(旧国鉄)で採用されている国鉄色は赤1号から青22まで何十色もある。

中央線快速は、1933年に東京駅 - 中野駅間で運行が始まり、1957101系電車以降の車両には国鉄色朱色1号(オレンジバーミリオン)0.5YR 5.3/8.8が車体色に採用された。


東京を東西に走る中央線快速は沿線の象徴として親しまれたが、首都圏の多数の路線が経済的な理由で銀色のステンレス車両が投入されるなか、101系や103系にかわる車両として1979年に投入されたオレンジ電車201系は、20101017日に引退した。

 

株式会社中川ケミカル 藤崎 豊

マンセル値:0.5YR 5.3/8.8

NOCS10R65



004 都営バスの黄緑

現在都内を走る都営バスが黄緑を基調としたボディカラーに変更された背景には、有名なエピソードがある。それはいわゆる「騒色問題」で、事の起こりは1981年、東京都知事が替った(美濃部鈴木)ことで、都バスの外装デザインが変更されたことがきっかけであった。それまでのクリーム色にブルーを配色したデザインから一変し、黄色と赤の配色にリニューアルされたのである。この話題はマスコミにも取り上げられ、「派手過ぎる」「品が無い」等の批判が寄せられ、「公共の色彩を考える会」が発足するきっかけにもなった。

こうした批判を受け、東京都ではデザインを再考し、現在の


原型となる黄緑を基調色としたデザインに塗り替えられたのである。 黄緑や緑は中性色といわれ、暖色にも寒色にも属さない中立=公共的なイメージや安全、安心のイメージがある。また近年ではエコを象徴する色として定番の色となっている。都バスの黄緑は山の手線のシンボルカラーなどとともに都心の交通機関を代表する色として定着している。

 

 

株式会社日本カラーデザイン研究所 宮岡直樹

マンセル値:7.5GY 5.5/10

NOCS7.5GY93



005 冬の東京の空

ロンドンで98日、パリで64日、ニューヨークで196日そして東京が214日。これは各都市の昨年の晴れ日の合計。四大都市の中でも東京は天候に恵まれている。特に冬の東京は、毎日晴れて本当に空が青い。西高東低の冬型の気圧配置は、列島の大陸側に住む人に厳しく東側に優しい。東京に皆が憧れるのは大都会の華やかな魅力だけではなく気候との相乗効果もあると思う。

遮るもののない関東平野のどこまでも続く青空と彼方に望む青白く雪化粧した富士山。江戸前の穏やかな海、注ぎ込む河川、運河に映る青い空。これらは、浮世絵から想像する江戸


の風景。

澄んだ空気の心地よい緊張感と恵まれた天候、風土の中で、江戸っ子の美意識が育まれ、粋な藍が江戸切子や小紋などをとおして今に伝えられ、高層ビルのガラス窓に青く映り鉄筋の構造物のニュートラルカラーにも青味を射す東京の青い空の下、トラッドとトレンドの洗練されたブルーのカラーコーディネーションとして受け継がれる。

 

CMFデザイナー 安岡義彦

マンセル値:5PB 5.2/9.5

NOCS5PB8(-1.0)