東京都を左右に横断するJR中央線は、東京駅を始発駅とする電車であり、東京を象徴する電車である。それゆえ中央線の車体色、朱色は、東京を象徴する色である(東京の色③)。
対して環状線のJR山手線(やまのてせん)」の黄緑は、「都心」を象徴する東京の色と言える。
この黄緑は、JRの前身、国鉄(日本国有鉄道)が定めた「黄緑6号」という名称が正式な色名らしいが、私が幼かった頃の記憶では、「ウグイス色」と呼ばれるのが一般的であった。
ウィキペディアによると、1963年に登場した103系電車で初採用されたということであるから、奇しくもその色の歴史は私の人生と同じということになる。
また『鉄道ジャーナル通巻217号』「国鉄車両の色“あのころ”の話」(星晃)によると、山手線はもともと黄色
新車両の外観イメージ(JR東日本のプレスリリースより)
(2.9Y8.5/9.6)だった。それが新設計の車両の103系投入に伴って黄緑6号となり、黄色い電車は総武線各駅停車として受け継がれていったという。山手線が黄色かったとは今では想像もできないが事実なのだろう。
その山手線のフルモデルチェンジが7月(2014年)にJR東日本から発表された。新車両となるのは2002年以来となる。リリースに車体色に関しての言及はないが、イラストを見る限り、黄緑は継承されている。今回の車両で画期的なのは車内に中吊り広告がないことだ。交通広告における本格的なデジタルサイネージ時代の到来である。こうした新提案は「都心」線ならではの先進イメージを強めることになろう。
営業運転は来年(2015年)の秋頃からの予定だ。2020年の東京オリンピックでも新車両の活躍が都心の賑わいの後ろ盾となっているのだろう。
DICカラーデザイン株式会社 川村雅徳
●マンセル値:7.5GY 6.5/7.8
●NOCS:7.5GY-7.3-2.4
東京と昭和を象徴する、おそらく最も有名な色と形の建築物であろう。高度経済成長下の昭和33年(1958年)、戦災で空き地となっていた芝公園の一角にこの紅白の塔は建てられた。当時は世界一の高さを誇り、現在でもその姿と街を眺めに毎日大勢の人々が訪れている。
ところで、タワーの色が最初はシルバー一色で計画されていたことはあまり知られていないのではないか。実は、設計途中に航空事故の防止のため、ひときわ目立つインターナショナルオレンジと呼ばれる黄赤と白との塗り分けに変更されたのである。なお、赤ともオレンジとも言いにくいその色は、完成当時は今よりももっと橙に近く(2.5YR 6/14)、現在は赤みのオレンジ(10R 5/14:G09-50X)に塗られている。
日が当たったところを近くから見るとオレンジは強まり、離れて六本木ヒルズなどから全体を眺めると赤く見える。これは大気による散乱が弱いために赤い光は遠くまで届くからであろう。あるいは、大気に散乱された青い光が被さったり、鉄骨の隙間や背景となる空の青による視覚的な影響もあるかもしれない。そして記憶の中でもその色は赤に近づく。この
ように、認識の世界における東京タワーの色にはオレンジから赤までのバリエーションがあるのだ。
東京のグレイッシュなビル群を背景に、鮮やかな公園の緑の
中に立ち上がる昭和の赤いヒーロー。
赤みを帯びる遠景
色や質感の対比的な構成が、都心の景観に動的な調和をもたらしている。また、その色は鳥居のように災厄を防ぎ、気持ちに活力も与えてくれるようだ。スカイツリーができあがった今も、その姿から元気をもらうために人々はここに集まってくるのかもしれない。
今日もその紅白の塔は東京の街を見つめ続けている。
一般財団法人日本色彩研究所 名取和幸
●マンセル値:10R 5/14
●NOCS:10R-8.4-3.2
忠犬ハチ公は、飼い主の死後も駅前で主人の帰りを待ち続けた「忠犬」として知られている。ハチの主人は東京府豊多摩郡渋谷町(現:東京都渋谷区)に住んでいた大学教授、上野英三郎であった。
彼は愛犬家で数頭の秋田犬を飼っていたが、ハチを渋谷駅まで連れて行くことも多かったらしい。しかし、ハチを飼い始
めた翌年の1925年、上野は急死した。亡くなった飼い主の帰りを渋谷駅前で毎日待ち続けたハチの姿は、新聞記事に掲載され、人々に感銘を与えたことから「忠犬ハチ公」と呼ばれるようになった。
渋谷の銅像は「ハチ公前」と呼ばれて、スマートホンの普及した今でも待ち合わせの場所として有名である。愛嬌のある姿は大勢の人に親しまれ、よく触られている部分は色が剥げている。現在のハチは剥製となって国立上野博物館に収められている、ちなみに本物のハチは白毛である。
株式会社中川ケミカル 中川 隆之
●マンセル値:10YR 2/1
●NOCS:10YR-1-16
青山通りの「青山2丁目」交差点から南北に伸びる300mほどの道路のイチョウ並木は、都内でも有名な紅葉スポット。通りの両側に146本の円錐形に整えられたイチョウが立ち並んでいる。青山通り口から樹木の高い順に植えることで遠近感をより感じさせ、その奥に見える聖徳記念絵画館の建物との景観美もよく知られている。
このイチョウ並木を手がけたのは近代造園技師の氏とよばれた折下吉延博士。大正12年に植栽された。使用されたイチョ
ウの木は、明治41年に新宿御苑在来木から採取した種子を宮内省南豊島御料地内の苗園で育て、成長していた1600本から選び、樹形を整えて植樹されたものという。
数々のドラマでもこのイチョウ並木のシーンが使われ、訪れたことがなくても知っている人が多いのではないかと思う。
11月から12月にかけて並木道は、黄金の絨毯を敷き詰めたような美しい通りへと変化する。
少し寒さを含んだ季節にイチョウ並木の黄金色と、青空とのコントラストも印象的である。
A-color 竹内 美香
●マンセル値:2.5Y 7.5/9
●NOCS:2.5Y-7-3.6
「東京メトロ(愛称)」が、少し前まで「営団地下鉄」だったのはご存知の通り。正式名称は「東京地下鉄株式会社」と言う。1941年に設立の帝都高速度交通営団(交通営団)を民営化するにあたり、2004に東京地下鉄株式会社法に基づいて設立された特殊会社である。
9路線11系統・195.1km(営業キロ)の地下鉄路線を運営し、都営地下鉄とともに東京の地下交通網を担っている。
「東京地下鉄」および愛称の「東京メトロ」(Metro フランス語で「地下鉄」の意)は、いずれも営団末期に社内(団
内)で募集したものの中から採用されたと聞く。「メトロ」という言葉は(イギリスやアメリカを除く)世界各地で「地下鉄」の意味として用いられているが、これは1863年にロンドンで世界初の地下鉄を開業させたメトロポリタン鉄道に由来する。
東京メトロのWebサイトによると、シンボルマーク(左)のハートを模したM(「ハートM」)は、メトロのほか、東京の中心にあるという存在感やお客様の心に響くサービス、心のこもったサービスを提供し続けるという意思を表現していると言い、その背景色にはコーポレートカラーの「ブライトブルー」を採用している。その活き活きとした元気なイメージは、東京メトログループの理念「東京を走らせる力」にぴったりである。また、右側の東京メトロには、セカンダリーカラーである「ダークブルー」が使われている。
株式会社中川ケミカル 伊藤正明
<コーポレートカラー>
●マンセル値:5B 6/9
●NOCS:5B-8.3-2.4
<セカンダリーカラー>
●マンセル値:5PB 3/4
●NOCS:3.75PB-4.5-11